欲望の歩廊 in Dalian そして Tianjin

サーチライトに群がる虫のような男たち。

　ここは大連（Dalian）市街、暗闇に浮かぶ発展する街と地元の民は嘯く。でもこれが街の姿なのだろうか。このなぜか猥雑な色の光景に私の疲れた脳がまたもや後ずさりしている。網膜に映し出される混沌とした街並みはたくさんの男達の欲望がパルスとなって走り入り乱れ焦点が定まらない。

　朝早く日本を発ち、遡ることおよそ１０日間に及ぶ連続の徹夜で疲れた私には辿り着いた場所とは思いたくないな。堆積し化石のような重みを背負う自分の疲れた身体を見るようだ。哀れでさえある。張りつめた緊張を癒して欲しいものだ。
「乗り遅れてもいいよ。少し休憩も必要さ。」
富める者から富めの１３億人を導く指導者の号令のもとに呼応し成長する民衆のパワー、そしてさらなる未曾有に膨らむ欲望。少しでも恩恵に与りたいけど、あまりにもの成長という歯車のギヤ比率の組み合わせの早さに、骨格形成が間に合わず節々が悲鳴をあげ、したたり落ちる焼けこげたオイルの臭いに腐敗すら想像させる。でも、そんなことお構いなしがこの中国ではセオリーと化していることを感じずにはいられまい。

天津（Tianjin）、
落日の様に興味をみせない街。
この暗さではまだ点灯しない。（塘沽区）

汽車の操作場のように巨大な吹き抜け空間に並ぶウィンドウ。

欲望の歩廊を君は見たかい。
売り買いを楽しんでいるようで地方者にとっては一番の娯楽である。（塘沽区）

　そう、私も何かを見失いながらも進まざるを得ないディレンマを併せ持っていることに気付く。今月の私は足が一本の案山子のように軸足が定まらず、どっちを向いているのやら風に身を委ねるように過ごしてきた。ここで風とは自分で選べる風である。つまり体の言い甘えだ。ずるいものだ、都合のいい風ばかり選ぶ。今は秋風が気分だな。
「弥次朗兵衛のように天秤背負ってない案山子だから無風でも倒れるぜ」なんぞとそんな捨てセリフを小さな吐息に隠してしまう。
そんな風ばかり待ってか、健全なはずのリズムは朝と昼の区別も付かず自身で崩し、あたかも生まれたての赤子の特権のような我が身が欲する我が儘を、ちょっと後ずさりして問うてみた。
「眠りたいときに眠って、お腹が減ったらママンのような便利な器であるコンビニのプラスティックフード食べて、気に入らなければ口を閉ざし、聞き入れてくれなければ貝になるのか。まあ自信たっぷりに虚勢張ってるよりは、悶々と悩んでる方が何かを生むのではないかという機会にまた悩まさせられるかな。でも前進がないよ」

天津随一の繁華街、和平路散策。
中国製は若者のみ、あとは日本や欧米の文化ばかりが通りを埋め尽くす。

古来の市場。布製のテントの下、雑然と１０００の店が並ぶ。

何処の国でも女神の興味は共通であることを確信する。

　こんなままならない状況に泣くことさえも出来ずこれでは赤子も落第だ。涙はあるはずなのに、きっと楽になれるはずなのに。それなりに体勢を立て直してみても胸の内がなぜかふらりふらり。あら、鬱な重心をこそばゆいはずの土踏まずが捜しているよ。踏ん張れるのか。頭と心とからだがバラバラだから土踏まずの働きも分かるのだろうか。うまくいってる時は気が付かないものだ。知らず上手に立っている。土踏まずが作る大地との僅かな隙間の空間に手で何か実体のある物を掴むように、そんな指令を脳が発する。
そんな想いのなか、一方では目の前の日常に成果目指して奮闘しなければならない自分が居る。通訳を介した言葉のやりとりに一日のほとんどを消費しベッドに就くころには疲弊した脳にお休みのシグナルが理解できるのか不安だ。目を閉じても脳裏に文字はもう浮かばない。薄明かりにまさぐるように線を描いてみるとザラザラした質感を持った紙の上にあたかもオイルコンテでスローに力加減をした上から下へと痕跡を示す縦の線が描けた。最後の端部は紙の白さに消え入るように弱々しいもので眠りの入口への案内としてはまずまずだろう。このあたりに非現実の匂いが宿す。

これを食べずして、天津に来たと思うな、ということらしいので。

夕食は天津名物「狗不理包子」（コウプリパオズ）を食す。
収縮する胃袋を癒して差し上げましょう。
平均してひとり６個は食べるそうだ。

　異国の夜にもそろそろ馴れ、帰国を明日に迎えた晩のこと、暗闇から突如、子を抱く貧しい身なりの婦人が現れ変形した缶を差しだし私の鼻先に物乞いをする。足早に振り払ってもワンブロックしつこく強請ってくる。終いには三歳くらいだろうか赤子の小さな手が私の肩口を掴んで離さない。諫めても踵を返してもその度に赤子も体を返し肩口を持ちかえる見事さに悲しい思いがお互いを襲う。
摩天楼の如く天までそびえ立つ高楼のした、地に突っ伏す老婆の右手にも錆びた缶に一角の硬貨２枚。隣で何事もなく無心にケンタッキーを頬張るカップル、横を抜ける自転車の大群、クラクション響かせながら先を争う渋滞する夥しい車の数。厳しい現実を突きつける目の前の歩廊から今も悲しい声が洩れてくる。老婆もこの歩廊（プラットフォーム）に生きる同じ乗降者なのだ。

コメント 16

お疲れなのだね～。
毎日暇に過ごしてるのが申し訳なく思えてくるよ・・・
お仕事とはいえ、身体を壊さないでくださいよ！
10日も徹夜って大丈夫っすか？
もう日本に帰ってるのかな？
気休めに甘いもんでも送りましょうか？
時間が分けてあげられたらいいんだけど、そしたら仕事の時間が増えちゃうのかな～・・・・・
by マコちん (2007-09-22 21:53) 

マコさま、早速のご訪問”謝謝”、持ち前の頑張りやさん、お元気そうで私も嬉しいです。徹夜とはいっても仮眠とってますから大丈夫ですよ、木曜日の深夜に帰ってきました。この三連休は睡眠にあてます。甘い物はね向こうでたっぷり月餅食べましたからこちらも大丈夫。ありがとね。
by ヴォイス (2007-09-23 08:34) 

そのお仕事は先が見えたのでしょうか？
それともまだまだ泥沼の状態？
なんだか、凄い町、すごい国で、『ワイルド・スワン』の頃とあんまり変わっていないような・・・。
中国で行きたい所はただひとつ「九賽溝」だけ。

身も心もボロボロっぽいですね。
では、歌います！
さ～　眠りなさい　つかれきぃった～　体を投げ出して・・・♪
眠って元気になったら、ニッポン男児の大和魂をみせてやってくれ！　
by (2007-09-23 11:26) 

お疲れ様ですm(_ _)mお身体お大事にして下さい！
私は遊びでアジアに行きましたが、雑踏にたくましく生きる人達とは裏腹に、枯れ葉剤が原因らしき（？）アザラシ肢症の人や地雷が原因（？）と思われる片足のの無い物乞いに力なく手を差し出されましたが何も渡せませんでした。
他にも不自由な人が居て、TVでも出ていましたが、何人かで演奏していて大道芸人としてお金を稼いでいる人も居ます。
この人達にはちょこっと撮影させて頂いたお礼として幾ばくかお渡ししました。
中秋の名月名物の月餅、沢山売ってましたが高くて買えませんでした＞＜
ちなみに平均6個の包子は何個食されました？！
by モモパパ (2007-09-23 21:57) 

こぎんさま、ご無沙汰しております。先はほぼ見えました。が、政府承認を最終的に頂くことは出来ませんでした。ですのでまだまだ先は長いです。ワイルド・スワンは有名な本ですが残念ながら読んではいません。宏美ちゃんは是非とも生でお願いします。あとロマンスもね。

モモパパさま、優しいお言葉に痛み入ります。物乞いには総じての見解ですが、組織的にこのような弱者が利用されている場合が多いと聞いております。つまりは上前をはねる悪い奴がいると。力になりたいお気持ちがあれば政府や民間の団体に直接寄付をすることが出来ます。自立を促す意味でも上げないで下さいと私も地元の方から言われました。月餅は確か２５日過ぎると差し上げてはいけない風習が北京にはあるそうですので、販売にも狂気が感じられます。包子はいろんな餡がありとても旨かった。皮が旨いんですよ。もちろんさんざん食べたあとがっつり６個食べました。小ぶりなんですよ。
by ヴォイス (2007-09-24 12:26) 

nyanさま、いつもご訪問有り難う御座います。可愛い奥様なんでしょうね。全部一度に頑張らなくていいからね、出来なくて当たり前、思いやりを忘れずに女性としての幸せが感じられる素敵な人生を歩んで下さいね。
by ヴォイス (2007-09-24 12:31) 

なんだか身も心も遠いところにいらしたようで・・・・。
今日は３連休という冬眠から覚めたところでしょうか。
責任とやりがいのある仕事なのですね。
どのような成果になるのか、たのしみです。
が、身体と心の健康がやっぱり一番。
これから果実等、おいしい食べ物の季節ですので、謳歌しましょう！！
by (2007-09-25 19:28) 

to-fukozoさま、どうも夢遊っぽく書きすぎたようで、自分が余計にスポイルされた感じに成ってしまいましたね。大丈夫ですよ、元気です。この仕事、監理までやれれば面白いんですけどね。柿が食べたいなあ。
by ヴォイス (2007-09-26 19:44) 

かなりお疲れの詩人様になってらっしゃいますね。
富んでるのか貧しいのか、どちらもホントの姿なんですね。
いくら格差社会と叫んでも、日本はやっぱり豊かだと思わざるを得ないです。

連休はゆっくりお休みになられたのでしょうか。
こぎんさんに代わってリクエストにお応えしておきます。

♪い～つでもふ～たりはシンデレラハネム～ン
あれ、違った？
by Takabee (2007-09-26 22:44) 

ちゃいまんがな〜、
♪あなた〜お願いよ〜、席をたたないで〜
♪息がかかるほど〜そばにいてほしい〜
でしょ？
えぇ、連休は冬眠状態でした。いくらでも寝れましたよ。
と、言いつつ。明日は大阪で会議です〜。しかも15時からの開始〜。
突撃モモパパ急襲作戦というのもあるんでしょうけど、、
トンボ帰りせなあきまへんのや。
ええぃ、久しぶりに北新地で飲ませろー、、、
なんて、、、ひとりごとです。
by ヴォイス (2007-09-27 21:23) 

お疲れ様でした！
ヴォイスさんも国は違うけど、同じ大陸続きにいたんですね。
アジアの街はどこも同じ様な感じなんですね。
正直、あのパワーにちょっと、疲れてしまいました。

ヴォイスさんも子供に捕まってしまいましたか・・・。
きっと、優しそうでリッチに見えたからでしょう！
物乞いもお土産売りの子供も、
にょろのとこにはあんまり、やって来ないんです。
節約主婦オーラが見えたのでしょうか（苦笑）。

え～！大阪で会議なのに、トンボ帰りって！！
「泊まって、朝イチの新幹線で帰るってのは？！」
↑にょろが仕事で東京出張の時、この言葉に騙されて、
なんど日帰りが泊まりになったことか（笑）。

♪すみれって すみれってブルーな恋人どうしが
　キスして キスして生まれた花だと思うの～
この歌、好きで～す！
by にょろ (2007-09-27 22:24) 

にょろさま、優しそうは合っているけどリッチではありません。優しそうな男はいけません。自壊を込めて申せば「いい人なんだけどね、でも、、、」で人生の岐路に立たされた男を何人も見ていますし、投げつけた女神様のきっつい眼差しも存じております。くわばらくわばら。大阪、往復に６時間を要して、僅か滞在時間３時間で帰ってきました。暑かった、へとへとです。是非とも恒例の週末ワイン試飲大会に自慢のとってもスパイシーなフルボトル持参で参加したいと思います。いつの日か。
by ヴォイス (2007-09-29 09:49) 

にょろさま、すみれ色の涙、不覚にも記憶にあらず。
http://www.youtube.com/watch?v=J87rteYdAgs
男にはきっつい唄っすね。魑魅魍魎カラオケ大会を開催しますんで練習しといてね。一緒に泣きますんで。
by ヴォイス (2007-09-29 10:06) 

やっぱり上手いねえ、いいねえ。国の宝や。

聖母達のララバイ
http://www.youtube.com/watch?v=1djK8DewDtY&mode=related&search=

Romance
http://www.youtube.com/watch?v=pnX7ORR4HCU&mode=related&search=

シンデレラ・ハネムーン
http://www.youtube.com/watch?v=RyUa3xy8h9g&mode=related&search=
by ヴォイス (2007-09-29 10:21) 

やっぱり、その国は嫌いだ・・・。
どうも、散々弄んで、最後にちゃぶ台をひっくり返すイメージがあって。
てか、やっぱ好きになれない、それに尽きるな。
お兄たまも相当お疲れなのね。
一息ついたら、一緒に馬鹿騒ぎして晴らしましょ。
日本人が、古来より持ち続けているささやかな知恵よ♡
by 従者 (2007-09-30 15:47) 

ははぁ〜、際物系被り物をご用意仕り候。
by ヴォイス (2007-10-03 13:16)